依頼する側にも書面の義務がある
探偵に頼むときの書面というと、事務所から渡されるものを思い浮かべます。実際には逆向きのものもあります。依頼する側が事務所に渡す書面です。条文で決まっているのに、あまり知られていません。
依頼者が渡す書面
探偵業法7条です。
探偵業者は、依頼者と探偵業務を行う契約を締結しようとするときは、当該依頼者から、当該探偵業務に係る調査の結果を犯罪行為、違法な差別的取扱いその他の違法な行為のために用いない旨を示す書面の交付を受けなければならない。
義務を負っているのは探偵業者のほうです。「交付を受けなければならない」なので、受け取らずに契約してはいけません。結果として、依頼する側は必ずこの書面を書くことになります。
書く内容は、調査の結果を犯罪行為や違法な差別的取扱いなどに使わない、ということです。書式は事務所が用意しているのが普通で、署名を求められる形になります。
なぜこの書面があるのか
探偵の調査は、相手の所在や行動を調べるものです。その結果は、使い方によっては相手を害する道具になります。だから条文は、依頼の入口で使い道を確認させています。
同じ考え方は9条にもあります。調査の結果が違法な行為に使われると知ったときは、その調査を行ってはならない、という定めです。7条の書面は、その前段にあたります。線引きの全体は探偵にもできないことがあるにまとめました。
署名する前に読む
用意された紙に署名するだけの場面ですが、読んでおく価値があります。確かめる点は次のとおりです。
- 調査の目的が、自分が話した内容と合っているか
- 使い道の制限が、自分が考えている使い方と矛盾していないか
- 書面の名義が、契約する相手と同じか
3つ目は名義貸しの話とつながります。探偵業法5条は、届出をした者が自分の名義で他人に営ませることを禁じています。届出の意味は探偵になるのに資格は要らないにあります。
渡した情報はどう扱われるか
依頼するときは、こちらの情報もかなり渡します。相手の氏名や住所、勤め先、生活の時間帯などです。これについては秘密の保持が定められています。
探偵業者の業務に従事する者は、正当な理由がなく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。探偵業者の業務に従事する者でなくなった後においても、同様とする。
後半が効きます。辞めた後も同じ、と書かれています。担当者が退職したから制限が外れる、ということにはなりません。
同じ10条の2項では、作成したり取得したりした資料について、不正または不当な利用を防ぐために必要な措置をとることが求められています。写真や報告書そのものの扱いです。
そもそも何が探偵業務なのか
ここまでの義務は、どれも探偵業務についてのものです。その探偵業務が何を指すかは、条文の最初のほうで決まっています。
この法律において「探偵業務」とは、他人の依頼を受けて、特定人の所在又は行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務をいう。
要素を抜き出すとこうなります。
- 他人の依頼を受けて
- 特定の人の所在または行動についての情報を集めるために
- 聞込み、尾行、張込みなど、実地の調査を行って
- その結果を依頼者に報告する
実地の調査が入っているところが要点です。公開されている情報を調べて渡すだけの仕事は、この定義に当てはまりません。当てはまらなければ、届出も、ここまでに見た書面の義務もかかりません。
依頼する側から見ると、頼もうとしていることが実地の調査を伴うかどうかで、相手に求められる義務が変わるということです。届出そのものの意味は探偵になるのに資格は要らないにあります。
実際に動く人についての定めもある
契約する相手は事務所ですが、張り込みや聞き込みをするのは個々の担当者です。条文はそこにも定めを置いています。
まず教育です。
探偵業者は、その使用人その他の従業者に対し、探偵業務を適正に実施させるため、必要な教育を行わなければならない。
次に名簿です。
探偵業者は、内閣府令で定めるところにより、営業所ごとに、使用人その他の従業者の名簿を備えて、必要な事項を記載しなければならない。
名簿は営業所ごとに備えます。これを備え付けなかったり、必要な事項を書かなかったり、嘘を書いたりした場合は、三十万円以下の罰金の対象になっています。
依頼する側から見ると、誰が動くのかを事務所が把握していることが前提になっている、という意味になります。実際に担当する人の氏名は、契約後に渡される書面にも項目として入っています。そちらは契約の締結を担当した人の氏名です。
資料をどうするかは契約で決める
その資料を最後にどうするかは、契約の中で決めることになっています。契約前に説明される項目にも、契約後に渡される書面の項目にも、資料の処分に関する事項が入っています。
調査の記録は、依頼者にとっても相手にとっても重い情報です。返してもらうのか、破棄してもらうのか、どのくらいの期間で行うのかを決めておくことになります。項目の並びは契約前に説明される9つの項目と契約後に受け取る書面の8項目に分けて書きました。
費用の話とは別に確かめる
依頼を検討する段階では、どうしても料金に目が行きます。ただし、ここまでに出てきた書面は料金とは別の話です。料金の組み立ては探偵の料金は内訳で比べるに、届出の確かめ方は届出をサイトで確かめる手順にあります。
まとめ
- 依頼者は、調査の結果を違法な行為に使わない旨を示す書面を渡す(7条)
- 受け取らずに契約してはいけないのは、探偵業者の側の義務
- 秘密の保持は、業務に従事しなくなった後も続く(10条1項)
- 取得した資料は、不正または不当な利用を防ぐ措置の対象(10条2項)
- 探偵業務は、実地の調査と報告を伴うものと定義されている(2条1項)
- 従業者への教育と、営業所ごとの名簿の備付けも義務(11条・12条1項)
- 資料を最後にどうするかは、契約前と契約後の書面の項目に入っている
渡す書面と受け取る書面を、両方とも見てください。