探偵事務所を確かめる

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探偵にもできないことがある

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探偵に頼めば何でも調べてもらえる、と考えて相談すると食い違いが起きます。届出をしていても、できることが増えるわけではないからです。このページは、その線引きを条文から確認します。

条文が最初に断っている

探偵業法6条は、探偵業務の原則としてこう定めています。

探偵業者及び探偵業者の業務に従事する者(以下「探偵業者等」という。)は、探偵業務を行うに当たっては、この法律により他の法令において禁止又は制限されている行為を行うことができることとなるものではないことに留意するとともに、人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならない。

読みどころは2つです。

ひとつは「他の法令において禁止又は制限されている行為を行うことができることとなるものではない」。探偵業法は探偵業を規制する法律であって、他の法律の禁止を解除する法律ではありません。

もうひとつは「人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならない」。調べる相手にも権利があることを、条文が正面から書いています。

具体的に何ができないのか

6条は個別の行為を列挙していません。他の法令が禁じていることが、そのまま禁じられたままになる、という書き方だからです。よく問題になるものを並べると、次のようになります。

やりたいこと関わる法令
相手の家や敷地に入る住居侵入罪
相手の同意なくGPSを取り付けるストーカー行為等の規制等に関する法律
相手のスマートフォンやアカウントを見る不正アクセス行為の禁止等に関する法律

依頼する側から見ると、これらを引き受けると言う事務所は、6条の「留意する」を守っていないことになります。

実際に営業停止命令が出ている

これは条文の上だけの話ではありません。警視庁は、処分を受けた探偵業者を3年間公表しています。2026年8月20日に見たときに載っていた1件は、まさにこの型でした。

公表されている処分理由によると、その事業者は警察官でないのに警察手帳に似た手帳を持って官職を名乗り、正当な理由なく人が住む家に宅配業者を装って入っています。処分は67日間の営業停止命令で、根拠として挙げられているのは探偵業法15条1項です。

届出証明書番号を持っている事業者でも、こうなります。届出の意味を探偵になるのに資格は要らないで「前歴が無いことしか見ていない」と書いたのは、この形が実際にあるからです。

引き受けてはいけない依頼がある

探偵の側だけでなく、依頼の中身にも制限があります。

探偵業者は、当該探偵業務に係る調査の結果が犯罪行為、違法な差別的取扱いその他の違法な行為のために用いられることを知ったときは、当該探偵業務を行ってはならない。

調査の結果が違法な行為に使われると知ったときは、その調査をしてはならない、という定めです。

ここに出てくる「違法な差別的取扱い」は、たとえば就職や結婚に関して出身などを調べて排除する場合が想定されています。

依頼する側にも、これに対応する義務があります。違法な行為に使わない旨を示す書面を、依頼者が探偵業者に渡すことになっています。中身は依頼する側にも書面の義務があるにまとめました。

調べることはできても、交渉はできない

もうひとつ、境目がはっきりしているところがあります。国民生活センターは、探偵業者にできることをこう書いています。

探偵業者は、依頼を受けて実地調査を行い、その結果を報告することはできますが、依頼者と事業者の間に入り、代理人として解約交渉や返金交渉をする等の行為はできません。

調べて報告するところまでが探偵業務であって、その先で相手と話をつけることは入っていません。代わりに交渉することは法律事務にあたり、別の資格の話になります。

だから「お金を取り戻します」「相手と話をつけます」という説明が出てきたら、そこは探偵業務の外です。国民生活センターは、被害金を回復すると言われた場合には契約を避けるよう促しています。料金の場面での見方は探偵の料金は内訳で比べるにまとめました。

別の会社に回すこともできない

もうひとつ、委託の禁止があります。

探偵業者は、探偵業務を探偵業者以外の者に委託してはならない。

届出をしていない相手に、調査そのものを回してはいけない、ということです。依頼した相手と、実際に張り込みをする相手が違っていても、その相手が探偵業者であることまでは求められています。

一括見積もりのサイトを通す場合は、ここが分かりにくくなります。見積もりを取り次ぐことと、調査を委託することは別なので、契約書に書かれている相手が誰かを見ることになります。契約の書面で確かめる項目は契約後に受け取る書面の8項目にあります。

相手の権利利益を侵害しないこと

6条の後半は、行為の種類ではなく結果のほうを見ています。人の生活の平穏を害するなどして、個人の権利利益を侵害しないようにする、という書き方です。

法令が名指しで禁じていなくても、やり方によってはここに当たります。先に見た営業停止命令の理由にも、調査対象者の生活の平穏を害して権利利益を侵害したという記述が並んでいました。

依頼する側にとって、これは実際的な意味を持ちます。執拗な尾行や、周囲への聞き込みの広げ方は、こちらが頼んだ結果として起きます。どこまでやるかを契約の段階で決めておくことになります。

契約後に交付される書面には、調査の内容・期間・方法を書くことになっています。方法まで書かせているのは、この点と無関係ではありません。項目の並びは契約後に受け取る書面の8項目にまとめました。

断られたときに考えること

ここまでの内容から、断られる場合の見方が決まります。引き受けられないと言われたとき、それは事務所の力量の問題ではなく、条文の側で決まっていることがあります。

その場合、必要なのは別の探偵を探すことではありません。つきまといや暴力が関わるなら警察相談専用電話(#9110)、配偶者や交際相手からの暴力なら配偶者暴力相談支援センターがあります。契約や料金でもめている場合は消費者ホットライン(188)です。

まとめ

  • 探偵業法6条は、他の法令の禁止が解除されないことを正面から書いている
  • 住居侵入、GPSの無断設置、アカウントののぞき見はいずれも別の法令の問題
  • 実際に、家に侵入するなどして67日間の営業停止命令を受けた事業者がいる
  • 違法な行為に使われると知った調査は引き受けられない
  • 調べて報告することはできるが、代わりに交渉することはできない
  • 6条は行為の種類だけでなく、相手の権利利益を侵害しないことも求めている
  • 調査を探偵業者以外へ委託することもできない

引き受けると言われたら、そこで一度立ち止まってください。

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